【Introduction of Iwakura 146】
□分類:磐座(狭義の磐座)
□信仰状況:神社に祭祀されている
□岩石の形状:石積
□備考: 石積は江戸時代に造られ、その中に祭祀対象の岩石がある(推測)。
□住所:岡山県美作市滝宮
□緯度経度:34°55'57.37"N 134°12'15.52"E
(googleに入力すれば場所が表示されます)
岡山県美作市に天石門別(あめのいわとわけ)神社が鎮座しています。
『古事記』によると、邇邇芸命(ににぎのみこと)が天降りするときに、天児屋、布刀玉、天宇受売、伊斯許理度売、玉祖を天降りさせ、八尺瓊勾玉、鏡、草那芸之剣に常世思金神、手力男神、天石門別神を付き添わしたと書かれています。
そして、天石門別神は、またの名を櫛石窓神(くしいわまどのかみ)や豊石窓神(とよいわまどのかみ)といい、御門を守護する神だと書かれています。
天石門別神(あめのいわとわけのかみ)は、天皇の宮殿の四方の門に祀られて天皇を守護しました。現在の神社の随身門(ずいじんもん)の左右に櫛石窓神と豊石窓神が祀られているのを目にします。
一方、現在の天石門別神社の御祭神は天手力男神(あめのたじからお)となっています。もちろん、古事記に書かれているように手力男神と天石門別神は別の神です。
『作陽誌』には、祭神は天石門別神で、一名、天手力男神と記されていますので、本来はやはり、天石門別神で、それが天手力男神と混同されてしまったと考えられます。
この天石門別神社は、『三代実録』に863年に従五位下から従五位上に昇叙されたことが記されていますので、非常に古い歴史を持った神社です。もちろん延喜式にも記載された式内社です。
1697年に津山藩主の森長俊により社殿が再建されましたが、 1972年に、滝宮ダムの建設が開始され、水没のおそれがあるので、7メートル程、嵩上げされた高台に社殿が移築されました。
現在の社殿の北側に「御正殿旧跡」という石碑が立っており、この石碑の場所が、元の社殿の位置です。
そして、そのすぐ北に1.5メートルほどの大きさのお椀を伏せたような形の石積があります。その位置関係から、当初は、石積を祀るために社殿が建てられていたが、その目的が忘れられて、社殿が岩石から離れていった例の一つと考えられます(平津豊:磐座から神社への変遷説)。
この石積の中には何が入っているのか、なぜ石積で隠しているのか、いつ隠したのか、など謎が多い石積です。
これについて、いろいろな伝説が伝わっています。
社伝には、大吉備津彦命が中国地方を鎮圧する際に、天手力男神の助けによりその目的を果たしたので、大吉備津彦命が自ら祭主となって感謝と戦勝を祝い、天手力男神を鎮祀した。本殿背後の石塚はこの祭場の遺跡である。と書かれています。
『作陽誌』には、この石積は、天石門別神がこの地に鎮座したときに、案内した猟師の塚又は貴人の墓と書かれています。
薬師寺慎一:『祭祀から見た古代吉備』には、次のような宮司の話が記載されています。「私の家は代々宮司職を世襲しており、私は第69代めに当たります。曾祖父中川寛(明治38年没)が残した記録によれば、250年ほど前、平らな岩があり、人がそれに腰掛けて弁当を食べたところ、神罰があった。そこで、その岩の周りを石で囲んだのだそうです。これが今の石積みで、中にある平らな石がイワクラです。なお、御祭神の天手力男之命はこの岩に乗って飛んで来られたと伝えられています。」
つまり、当初、平らな岩石が祀られていて、それを祭祀するために社殿が建てられた(863年以前)。その後何度か社殿が再建されるとともに神社の社殿での祭祀が発展し、岩石への祭祀が忘れられた。祭祀されていない岩石に対して不逞が行われるようになったが、神罰がくだった。祟石となった岩石に人が触れないように周りに石を積んで覆い隠した(1750年頃)。ダム対策のために社殿を高台に移動させたため、岩石と社殿が離れてしまった(1972年)。と推測できます。
石積に対して、現在、どのような祭祀が行われているのか情報を持っていませんが、石積に注連縄が巻かれており、過去は磐座として祭祀されていたはずなので、狭義の磐座に分類しました。厳密にいうと石積ではなく、その中に鎮座する岩石が対象物です。
なお、この天石門別神社の北50メートルの場所に、幅5メートル、落差13メートルの琴弾の滝があります。そのためこの神社は、「滝宮神社」や「お滝さん」とも呼ばれていて、雨乞いの祈祷も行われます。この森に天石門別神を祀る前は、滝と磐のある聖地であり、本来は水の神を祭祀していた可能性が高いです。
#イワクラ #磐座 #巨石 #megalith #古代祭祀 #巨石文明 #古代文明 #岡山県 #美作 #天石門別神社 #天石門別 #石積
本ページのリンクおよびシェアは自由です。画像や文章を抜き出して 引用する場合は出典を明記してください。リンク、シェア、出展を明記しての引用は許可していますが、「転載」、「盗用」、「盗作」は禁止しています。最近、このページの内容をそのままコピーして転載しているサイトを見かけますが、まとめサイト等への掲載や転載は禁止します。
[さらに詳細な情報]
イワクラハンター(平津豊)による磐座・イワクラ・岩石遺構などを一覧するサイトです。ミステリースポットの姉妹サイトです。
1987年からイワクラハンター平津豊が各地に残る不思議な岩石やイワクラを調査したレポートを掲載しています。年間5万人が訪れる人気サイトです。
定期的にイワクラに関するセミナーを開催しています。
いわくら絵本の購入は こちら
イワクラの基礎知識はこちら
『イワクラ学初級編』より抜粋しています。