167 岡山県 吉備の中山 経塚

【Introduction of Iwakura167】Visit・Photo:2018.3.13/Write:2025.4.5


□分類:経塚(非イワクラ)

□信仰状況:祭祀されていないが過去に信仰の形跡あり。

□岩石の形状:積石

 

□備考:八大龍王は吉備津彦神社(備前)に祭祀されている。


 

□住所:岡山県岡山市北区一宮

□緯度経度:34°40'27.87"N 133°51'30.08"E

 

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吉備の中山には数個のピークがありますが、その一番北のピークが最高峰(170m)となり、龍王山と呼ばれています。頂上に八大龍王を祀る石の祠が置かれています。8匹の龍を表すためでしょうか、祠の正面には8個の丸い穴があけられています。ちなみに八大龍王は法華経に登場する仏法を守護する竜族の八王で、難陀、跋難陀、娑伽羅、和修吉、徳叉迦、阿那婆達多、摩那斯、優鉢羅のことです。元々は仏教を守護する龍王でしたが、神仏習合の中で、日本の龍神信仰と同一視され、雨乞いの神という扱いも受けたと考えられます。

現在の石の祠は、天明年間(1781~1789)の大干ばつの時に、岡山の商人の常磐屋が設置したものと伝わります。一方、元禄に書かれた『備前國一宮大明神并御兩神年中行事(1703)』に「三月三日 山上八體龍王祭禮」と記載されていることから、常磐屋が石祠を設置する前から八大龍王の祭祀が行なわれていたことがわかります。

このように、龍王山の頂上は、古くから雨乞いの場所として重要視されており、現在も吉備津彦神社の末社の龍神社として祭祀が行われています。

しかし、八大龍王の石祠は江戸時代に造られた社ですのでイワクラではありません。

八大龍王の石祠の両脇に経塚があります。『岡山県御津郡誌(1923)』には、次のように記載されています。「龍王九経塚 一宮山最頂點にあり、中央に龍王祠あり。東塚には經筒を掘出せる穴ありて四邊小石累々、經塚の特色なり、東西兩塚相距ること三七尺形略同し。いつの頃か經筒二個を掘出し雨乞に用ふ。頂上に置きしが一個は盗み取られ、一個は一宮神社に藏せらる。唐金製高七寸三分蓋あり。青錆を帯び金色燦爛繪の如し。初め二個あり、左右二箇所に別々に藏め小石にて覆ひしが、明治八年頃之を出し水を盛り、雨を祈る。而して又もとの如く埋藏せしを明治十年頃盗み去られ、爾來一個を社藏とす。此の龍王の圓峰は古墳地にして直下八間にして長三十間幅十間の平坦地あるは前方部に當り、其の南面に竹藪塚あり。此の地に古瓦を存するは中古堂塔地となりて寺を建てたる証にして(鎌倉時代以前)其の時代に經塚を築きしものなるべし。」

1875年に2個の経筒は取り出されて雨乞いに用いられましたが、埋め戻したところ、1877年に1個が盗まれたため、残りを吉備津彦神社に保管したようです。かろうじて残った1個の経筒は、金銅製の筒で平安末期から鎌倉前期のものと推測されています。筒の周りが三つの重ねた石で覆われているのが特徴です。

経塚とは仏教の経典を筒に入れて土中に埋め、小さな石を寄せて塚にしたものです。藤原道長が1007年に金峰山に埋納したのが始まりとされていて、経典を、56億7千万年後の弥勒の世になるまで保管することが目的です。釈迦が滅した2000年後には暗黒時代がくるという末法思想があり、10世紀に1052年に末法となるとの説が広まったため、平安時代の人々は作善業を行って来世で浄土に生まれ変わろうとしました。この作善業の一つとして経塚が盛んに造営されました。

この経塚は仏経典への信仰であり、岩石が対象ではありませんのでイワクラには含めず、非イワクラに分類しました。しかし、平安時代にこの場所に経典を埋めた理由は、龍王山の頂上が雨乞いの聖地であったからだと考えられます。

 

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