【Introduction of Iwakura159】Visit・Photo:2024.5.12/ Original:2024.5.12/ Write:2025.2.16
□分類:磐座(狭義の磐座)
□信仰状況:神社に祭祀されている。
□岩石の形状:巨岩の立石の回りに巨岩群(ストーンサークル)
□備考:人工物。高島には許可を得ずに上陸できないので注意。
□住所:岡山県岡山市南区宮浦
□緯度経度:34°36'09.41"N 133°59'24.69"E
(googleに入力すれば場所が表示されます)
岡山の児島湾に浮かぶ高島は、高島神社が鎮座し、この神社の遥拝所が対岸の宮浦にあります。江戸時代には池田藩主の遊楽所となり手厚い保護を受けました。明治になると嵐家が入植しますが、農業経営は軌道に乗らず1889年に藤田組に干拓許可が下ります。1924年には岡山市が5000本の桜を植えて観光化に乗り出し、花見客で賑わいました。戦争後は、島を訪れる人は途絶えて港や島一周道路が荒廃しました。現在は、同和興産の私有地であり史跡でもあるため上陸は禁止されています。警報されますので注意してください。筆者は2024年に岡山歴史研究会に同行させていただき念願の渡島が叶いました。
高島神社という立派な社殿が建ち、その後ろの岩盤山の頂上に巨大な立石を中心としたストーンサークルがあります。高島神社から北に100メートルやぶこぎをして頂上にたどり着きましたが、人が訪れていない状況で岩石は樹木に沈んでいました。木や草を取除くと中心部が現れました。雨の中なので全貌を現すまでの掃除はできませんでしたが、立石を中心とした巨大なストーンサークルの見応えは十分でした。
『日本書紀』には、神武天皇が東征するときに吉備の高嶋に行館を建てて3年滞在したと書かれています。この「高嶋宮」については、笠岡諸島の高島、岡山市中区賞田の高島神社など、備後から備前まで数箇所の候補地がありますが、文部省の神武天皇聖蹟調査では、この児島の高島が聖蹟伝説地であると認定されています。
1940年に水原岩太郎がこの高島の遺跡について報告していますが、1946年11月24日に大場磐雄も訪れています。『貝塚(1957)』によると、「島のほぼ中央高所に屹立する一大立石を中心に数十の自然石が囲繞する一画がそれで、中心となる立石は高さ3.4メートル 、幅2.3メートル、奥行き3メートルのほぼ方柱状を呈する花崗岩質の巨巌で、その前後に左右に同質の磐石が立ち並び、前面に少し離れて七個の平石があって「拝み石」と称する。写真を見た際は古墳が崩壊したものと疑っていたが実地を見るに至って然らざることが判明し、更にこの巨石群は島内唯一のもので。他に同種の石材の露出する箇所を見ていないので人工を以って構築したとの可能性も一応考慮される様に考えられた。」と述べています。
大場磐雄は、立石の岩石群に対して人工の可能性に触れながらも自然の景観との認識に立っています。しかし、1967年の発掘調査において数個の岩に牡蠣の殻が付いており、海岸から持ち上げられた岩であることが明確になりました。つまり、この岩石群は人工的に構築されたものです。
『サヌカイト創刊号(1969)』によると、その発掘調査は、瀬戸内考古学研究所の行事として鎌木義昌を中心として1967年9月に実行されました。岩盤山の頂上の立石を中心に5箇所のトレンチを掘りました。岩石群の下や周りからおびただしい数の鏡、鉄剣、土器などが出土しており、特に滑石で造った小さな剣(3.7センチ)、鏡(3センチ)、勾玉(5.3センチ)の三種の神器と糸を紡ぐ道具である紡錘車は独特のものです。これらは5世紀末から6世紀初頭の遺物と推定されています。また、天狗山北麓からは縄文式土器や弥生式土器も出土しています。
余談ですが、このトレンチを掘ったときに中心の立石が南に傾き、後日に復旧しています。
また、手元にある1940年に書かれた『高島遺跡見取り図』には島の形に添って北斗七星(貧狼星、巨門星、禄存星、文曲星、廉貞星、武曲星、破軍星)が図示されています。この図が作られた背景はわかりません。当日、島の中心部から北端まで探索しましたが、地図の星の位置に巨岩が配置されている様子は確認できませんでした。
高島の立石で行われていた祭祀は、宗像の沖ノ島と類似しています。吉備の児島あたりは潮待ちの場所であったことを考え合わせると、航海の無事を祈った立石であったと考えられます。
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