149 宮崎県 神さん山の三角岩

【Introduction of Iwakura 149】


□分類:岩石信仰(広義のイワクラ)

□信仰状況:民間に祭祀されている

□岩石の形状:岩単体 

□備考:人工物と推測


□住所:宮崎県延岡市北川町

□緯度経度:32°44'02.29"N 131°33'33.03"E

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宮崎県延岡市北川町の大崩山から流れる祝子川は、火遠理(ほおり)命が生まれた時に、産湯として使った川と言われています。火遠理命は、邇邇芸(ににぎ)命と木花之佐久夜比売(このはなさくやひめ)命との間に生まれた3兄弟の一人で、別名、天津日高日子穂穂手見(あまつひこひこほほでみ)命、又は虚空津日高(そらつひこ)、一般には「海幸山幸」の説話に登場する山幸彦(やまさちひこ)で知られています。

天孫が山の民と海の民を支配していく過程が紡がれた日向三代(火遠理命→鵜葺草葺不合命→神倭伊波礼比古命)の物語に登場する一人です。この火遠理命が、田の神であることから、祝子川の流域には、雀が生息していないという伝承があります。

神さん山と呼ばれる山の中腹に岩屋があり、その中に三角形の岩石が祀られています。

この岩屋は、考古学的には、巣ノ津屋洞窟遺跡であり、縄文時代の早期の打製石鏃や、石匙が出土しています。この祝子川地区には下祝子洞穴遺跡もあり、縄文時代に多くの人が住んでいた場所です。しかし、岩屋についての伝承は何も残っておらず、「神さん山」という名称以外は、長い間忘れ去られていました。

この神さん山の岩屋から800メートル南東に、祝子川神社が鎮座しています。祝子川神社は、1885年から1955年の間、一時的に神さん山の岩屋に祀っていましたが、今は本来の場所に戻されています。祝子川神社が、神さん山の岩屋に遷座されていた間は、石段や鳥居が整備されていたようですが、祝子川神社が元の位置に戻ると、再び忘れられ、参道自体も壊れて登れる状態ではなくなっていました。この場所が注目されたのは、1986年に、福岡の宮脇淳一氏が、神さん山の存在を聞き、地元の協力を得て、荒れ放題だった参道を整備したのがきっかけだそうです。

20メートルもある巨岩が手前に大きくオーバーハングしており、その巨岩が支え合って岩屋が形成されています。この岩屋の中に、三角形の岩があります。その形は正確には三角錐です。その状況から岩屋を形成している巨岩とは別の岩石を設置したと考えられますので、この三角錐は人工物です。

三角錐の正面の三角形の底辺は376センチメートル、西辺は312センチメートル、東辺は286センチメートル、高さは245センチメートルです。奥に伸びる辺は、巨岩の天井に合わせて造られており、その隙間は数ミリの正確さです。ぴったりと造られており、驚愕です。正面の三角の面は130度~310度つまり南東から北西線に沿って造られており、三角形の面は220度南西を向いています。

この場所の冬至の日の入りの方角は243度で、17時16分に日が沈みますが、その方向には、1391メートルの国見山があるので、日没はもっと早く訪れ、角度も南に寄ります。2013年12月22日に訪れたとき、16時頃に冬至の光は黄色味を増し、三角形を黄金色に眩しく照らしました。この光景を作り出す為に三角錐の岩を置いたのかもしれません。岩屋の前は広場になっており、叩くとポンポンと良い音のする円形の岩肌がありました。岩屋がオーバーハングしているために、鳥居の前あたりに音が響きます。この広場で冬至の祭りが行われたのかもしれません。また、周辺で音を反射する反射板、方位石、線刻らしきものなどを見つけました。

地元では、神さん山の頂上の岩石を人面岩と呼んでいます。この人面岩が顔ならば、三角石のある岩屋が股の部分であり、神さん山自体を人の体に模したのではないかという説があります。そうであるなら、この岩屋は、子供の産まれるところであり、子孫繁栄を祈る場所となり、三角形は女性器を表しているということになります。

さらに、古墳時代のかまどは、三つの石を三角形に置いたものであったように、三角形は「火」も象徴しています。そして、女性器と火の間にも、深い関係があります。メラネシア、ポリネシアから南米にかけての、火の起源神話には、女性器から火が生まれるものが多く、日本の神話においても、火と出産との関係が随所にみられます。イザナミは、火の神のカグツチを産んだために、女性器に火傷を受けて亡くなります。垂仁天皇の子であるホムツワケは火の中に産まれます。木花之佐久夜姫は、一夜で懐妊したため、実子であるかどうかを疑われ、その疑いをはらすために、産屋に火を放って子供を産みます。この時に生まれた子供が火遠理命で、この三角岩のある祝子川を産湯に使ったと伝わっているのです。

この三角岩は、岩屋という女性器から生まれる火を、かたどったものではないでしょうか。三角岩の前には、火が焚かれた跡も見られます。

この三角岩が冬至の日に照らされることは確認しましたが、これだけでは冬至の日を特定することはできませんので、天文利用のための岩石遺構(広義のイワクラ)には分類できません。今後の研究を待ちたいと思います。

この場所で行われた祭祀についての記録はありませんが、現在は民間によって信仰されていますので、岩石信仰(広義のイワクラ)に分類しました。 

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