【Introduction of Iwakura 150】
□分類:岩石信仰(広義のイワクラ)
□信仰状況:民間に祭祀されている
□岩石の形状:岩組
□備考:溶岩が節理で割れた物と判断
□住所:鳥取県西伯郡伯耆町大内
□緯度経度:35°21'42.96"N 133°30'05.13"E
(googleに入力すれば場所が表示されます)
鳥取県西伯郡伯耆町大内に「はまなんご」と呼ばれる岩組が祀られています。はまなんご」という名前には「浜ノ難言」や「浜難宮」という漢字が当てられています。
『三須家文書』には、「浜之難言社地百聞 百五十間 祭神倉稲魂命、右社波打石二丈 斗り大岩御座候」と書かれており、「波打石」と表現されていますが、縄文海進によって海岸線がこの位置にあったとは考えにくく、波打石は「はまなんご」に「浜」の漢字を当てたために起こった誤解ではないかと思います。この「はまなんご」は奈良山添村の「ウチカタビロ遺跡」や兵庫家島の「マルトバ遺跡」のような縄文時代から伝わった言葉で、現在では意味が失われてしまった言葉と考えます。
「はまなんご」の前には、大内村の松本藤太が1857年に建てた石の祠があり、稲の神である倉稲魂命が祀られています。『溝口ふるさと散歩(1982)』には、添谷神社の三須神主とともに岩石の前に集まり、お神酒、白米、魚介類を供えて村の安全と豊年を祈り、そこに池さん参りの人々も参加すると書かれています。この池さんとは、大雨でもあふれることがなく、干ばつでも枯れることのない神秘的な池のことで、大山の中腹にあり、池の主は龍神です。池に御神酒を笹船に注いで浮かべると水の湧き出る方へ進んでいき、水を汲んで田にまけば雨が降ると言われています。祭日には川原道を通って池さんに行き、御神酒を池に注いで豊作を祈願したようです。
「はまなんご」は一見、岩が組み合わさっているように見えますが、人工物ではなく自然に形成されたものと判断しました。岩の表面に小さな穴が空いていて、溶岩が冷えて固まった流紋岩か安山岩です。加工痕や特定の方位に向けられていることもありませんので、この岩石が節理で割れて、風化して現在の景観が出来上がったと考えられます。元々は、もっと高かったものが崩れたので隙間が空いているのでしょう。群馬県前橋市岩神稲荷に祀られている飛石は、浅間山の噴火時の溶岩ですが、非常によく似ています。また、この「はまなんご」の周囲には、規模の小さい「小はまなんご」が7箇所ほど存在していたそうですが昭和初期の農地開拓でなくなりました。これも、このあたりに溶岩が散乱していた証拠です。
さて、この「はまなんご」に対する祭祀を考えるうえで重要なのは4.5キロメートル西に大山があることです。この場所に立つと大山の山肌が迫ってきます。伯耆富士と呼ばれる大山への信仰は、山頂から水と薬草を持ち帰る「もひとり神事」に代表されるように、大山の水の恵みへの感謝で、1000年以上も前から行われています。
大山が目の前に迫る「はまなんご」のロケーションから推測すると大山への感謝と畏敬がその根底にあると考えられ、「はまなんご」を介して大山を祀っていたのではないかと考えられます。また、村の人が「はまなんごさん」と呼んでいることから石神の可能性もあり、この溶岩自体を大山の代替物として祭祀したのかもしれません。倉稲魂命の祠については、これらの大山への祭祀が忘れられた後に、江戸時代に豊作を祈る為に建てられたものであり、時代と共に祭祀が変遷していると考えます。
2024年10月17日に放映された鳥取県の中海テレビの山陰歴史バラエティ「諸説あります」に出演して「はまなんご」を説明しました。この番組は、伝説や歴史をひもときながら真実に迫っていくという番組ですが、「はまなんご」は村人から大切に守られている「大山の子供」という表現で説明しました。
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