【Introduction of Iwakura 25】
□分類:磐座(狭義の磐座)
□信仰状況:祭祀されていないが過去に信仰の形跡あり
□岩石の形状:岩組
□備考:人工物
□住所:長野県北佐久郡立科町芦田
□緯度経度:36°09'23.3"N 138°16'47.3"E
(googleに入力すれば場所が表示されます)
長野の聖山である蓼科山の北側6キロメートルの雨境峠に、鳴石(なるいし)と呼ばれる岩があります。
私が訪れたのは2006年でした。濃い霧の林を歩いていると、突然目の前に生き物のような岩が現れたのを覚えています。
雨境峠一帯には祭祀遺跡が多く発見されており滑石製の勾玉などが多く出土しています。鳴石の発掘調査によると鳴石の周りは小さな石が敷き詰められ、祭壇状の石が発見されています。この祭壇石から鳴石に向うと、その先に蓼科山が望めることから、蓼科山の神をこの鳴石に降ろして奉斎していたのでしょう。
楕円形の2つの岩が重なっていて、表面は滑らかです。形状は明日香村の亀石に非常に良く似ています。
この岩は、蓼科山の溶岩が固まったものですが、周りには大きな岩石は無く、別の場所から2つの岩を運んで、ここに重ねて据えたものと考えられています。周りに大きな岩石は無いと書きましたが、この鳴石の西10メートルの所に同程度の岩が存在しています。この岩も鳴石と同じく祭祀されていたと推測されています。
鳴石を軽く叩くと、キーンという金属音がします。鳴石の成分に金属分が多いのだと思います。
金子詮寅が1758年に書いた『信陽佐久立科高井飯盛山嶺麓 直田八箇略誌』には、次のように記載されています。「麓に鏡石と言う奇岩あり。鳴石ともいう。大きさ六七尺なる大石なり。石肌鏡の面の如し。是権現の御宝石と言伝えたり。昔時、石工来り、此石を割らんと欲して、玄能を以て二つ二つ之を打つ。時に山鳴り谷答えて山中震動す。忽ち火の雨を降らせ、石工之が為に死すと。故に人打つことなし。試みに小石を以て之を打つ時、其の声金磐の鳴るが如し。是又奇石なり。」
「火の雨が降る」という言葉は、この地方の岩石遺構に共通する表現で、私は過去に火の雨が降るという災いが実際に起こったのではないかと考えています。
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