170 岡山県 吉備の中山 御鳥喰岩

【Introduction of Iwakura170】Visit:2018.3.3/Photo:2025.2.3/Write:2025.4.26


□分類:信仰設備(広義のイワクラ)

□信仰状況:過去に信仰に用いられた形跡あり。

□岩石の形状:岩単体

□備考:御鳥喰神事に用いられていた岩石、他にも候補の岩石がある。


□住所:岡山県岡山市北区一宮

□緯度経度:34°40'31.11"N 133°51'47.54"E

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現在の吉備津彦神社(備前)の社殿は1697年(江戸時代)に建てられたもので、それ以前は現在の本殿より南東の方向にあったことは、【Introduction of Iwakura163】で説明しました。室町時代に描かれた『古代御社図(1471年)』によると、その室町時代の本殿の南東に御包丁人八島殿が描かれています。そして、『備前州一宮密記』に、「八嶋殿 本壇之内有石、稱神座 備供之時先備八島殿而後獻正宮 即是社例傅習也、備八島殿之時、靈烏來彼石上、啄備供。是為八島之宦者故也」と書かれています。これらのことから、正宮に供物を献上する前に、八嶋殿の神座と呼ばれる石の上に供物を置くと、からすが飛んできて啄む儀式を行っていたことがわかります。

また、『御神前御備物下方書附(1703年)』にも「惣而本社御膳ヲ備ル時、八志摩殿とて本社之地内ニ而御供ヲ備祭、靈烏也」と記載されており、社殿が現在の地に移動した江戸時代でもこの儀式が行われていたようです。

この儀式は御鳥喰式(おとくいしき)と呼ばれる儀式で、各地に残っています。

厳島神社の鎮座する広島県の宮島では、「御島廻り」という宮島を船で1周する神事が行われますが、養父崎(やぶさき)神社の沖合で、海に浮かべた板の上に粢団子(しとぎだんご)を置いた後、神鴉(ごがらす)が飛んできて団子をくわえて森に帰る儀式が行われています。厳島神社を建てる場所を神鴉が案内したという伝説に因んでいるようです。

また、愛知県の熱田神宮の摂社である御田神社の祈年祭と新嘗祭のときに、ホーホーと烏を呼びながら神饌の団子を土用殿の屋根の上に投げ上げるという烏喰の儀が行われます。昔は、からすが団子を食べなければ祭が行われなかったといいます。

神武天皇を熊野から大和へ案内した八咫烏(やたがらす)や天皇を表す幢幡に烏が用いられていた例を挙げるまでもなく、日本の伝説や神事において「からす」は特別に取り扱われています。ノアの箱舟の伝説に鳩と烏が登場しますが、長距離を航海する人は、船で鳥を飼い、鳥を放すことで陸地が近いかどうかを確認したといわれています。海の民と「からす」の間に深い関係があり、日本人のルーツが長距離を航海する海の民であった可能性があります。また、吉備の中山に御鳥喰岩が存在することは、吉備の人々のルーツもまた、海の民であったのかもしれません。

この御鳥喰岩(おとくいいわ)の位置については、『古代御社図』から、徳寿寺前に流れる小川のすく側にあると読み取れます。徳寿寺は室町時代から位置を変えずに吉備津彦神社(備前)の南140メートルの位置に存在していますので、範囲は絞れます。

最近、この場所に十一面観音の石像が立ち土地の整理が行われていますが、御鳥喰岩は奇跡的に残っています。薬師寺慎一氏の書籍に登場する御鳥喰岩は、長辺が3メートル程度ある上面が平らな岩で、十一面観音像の後ろに存在しています。また、他の岡山の磐座研究家からは、1メートル弱で上面は平に加工されたような石を紹介されました。この石は、十一面観音像の前に存在しています。現時点では、どちらが本当の御鳥喰岩なのかの判断はできませんが、是非、これらの岩石を残して欲しいと思います。

写真には薬師寺慎一氏が特定した御鳥喰岩を用いています。

この御鳥喰岩は、『備前州一宮密記』では「神座」と表現されていますが、供物を置く台として用いた岩石なので信仰設備(広義のイワクラ)に分類しました。

 

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