169 岡山県 吉備の中山 吉備津彦神社の元宮磐座

【Introduction of Iwakura169】Visit・Photo:2016.8.13/Write:2025.4.22


□分類:【新】磐座(狭義の磐座)

□信仰状況:神社に祭祀されている。

□岩石の形状:巨岩単体

□備考:吉備津彦神社が2000年頃から祀り始めた岩石


□住所:岡山県岡山市北区一宮

□緯度経度:34°40'26.92"N 133°51'28.34"E

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備前一宮である吉備津彦神社(備前・岡山市北区一宮)は、大吉備津彦命(別名:彦五十狭芹彦命)を御祭神とする神社で、吉備国が分国されたことにともなって式内社である吉備津神社(備中・岡山市北区吉備津)から分社した神社と考えられます。

吉備津彦神社の背後には、吉備の中山のピークの一つである龍王山が聳えており、頂上に八大龍王の石祠と経塚が存在しています。その側に2~3メートルの巨岩があり、吉備津彦神社は、この巨岩を元宮磐座と名付けて磐座祭を行っています。

神社のホームページには、「吉備の中山の磐座を通じて天神地祇に祈りを捧げてきたと伝えられています。毎年5月の第2日曜日の例祭日には、命が国の平和と安全を祈った古事にならい、社殿で参列者の登山の安全を祈念の後、参列者と一緒に境内山頂に登拝し、岡山の地域の平和と安寧をお祈りいたします。」と書かれています。

一方、元宮磐座の側に立てられた看板には、次のように書かれています。「神社の社殿がまだ無かった古い時代、人々は自然の大きな岩や崖に神様が鎮座されていると考え、これを「磐座」として崇め奉りました。吉備津彦神社では、この岩は神社が建てられる以前の元のお宮と考え、元宮磐座の名前をつけ大切にお祀りしています。この岩についての古い記憶はありません。夏至の日にはこの場所と吉備津彦神社を結ぶ延長線上に太陽が昇ります。吉備津彦神社では、5月の第2日曜日に「磐座祭」を執り行い、この元宮磐座を中心に吉備の中山にある他の磐座や古墳などを巡りお祀りをしています・・・吉備の中山を守る会」

「夏至の日にはこの場所と吉備津彦神社を結ぶ延長線上に太陽が昇ります。」の部分については、【Introduction of Iwakura163】で詳しく記載したように本殿が現在の地に移動した江戸時代以降の現象です。

この看板の説明文の中で重要なのは「神社が建てられる以前の元のお宮と考え」と「この岩についての古い記憶はありません。」の部分です。これは、伝説がともなわない岩石に対して、磐座ではないかと想定して最近祀り始めたことを意味しています。岡山の知人に尋ねると、やはり、元宮磐座が祀られ始めたのは最近であるとのことでした。

したがって、佐藤光範氏の『古代祭祀吉備の「磐座」(1992)』や八木敏乗氏の『岡山の祭祀遺跡(1990)』には元宮磐座は登場しません。しかし、須田郡司氏の『日本の聖なる石を訪ねて(2011)』には記載されています。須田氏に尋ねると吉備の中山を訪れたのは2006年とのことです。そうすると元宮磐座は、2000年頃に祀り始めたことになります。

ここで不思議なことは、2001年から2012年まで、吉備の古代史に関する書籍を精力的に出版された薬師寺慎一氏の書籍のどこにも元宮磐座が登場しないことです。中山の麓に住んでいた薬師寺慎一氏は、吉備津彦神社(備前)が元宮磐座を祭り始めたことは当然知っていたはずですが、あえて無視しています。祭祀されていなかった岩石を吉備津彦神社(備前)が磐座として祀り始めることに対し、批判する意味があったのではないでしょうか。また、ただの岩石を祀ってしまうという意味では、次のようなこともありました。2016年頃、吉備津彦神社(備前)の駐車場の西に犬島の石で造ったアート作品「吉備の巌(TODA Shugen作)」が設置され、この岩石に注連縄が巻かれてしまっていました。このアート作品は直ぐに撤去されています。

このようなことは吉備津彦神社(備前)に限ったことではありません。神社が岩石に注連縄や紙垂を付けるということは、どういう意味かを深く考えて行ってもらいたいものです。

さて、元宮磐座は、古代祭祀跡ではなく吉備津彦神社(備前)が最近祭祀を始めた岩石です。吉備津彦神社が「磐座」と名付けて祭祀していますので「磐座」に分類しますが、古代から祭祀されている磐座と区別するために【新】を付けることにします。

これから何世代にもわたって祭祀が続けられていくと、ただの岩石も磐座に昇華するかもしれません。 

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