【Introduction of Iwakura 66】
□分類:岩石信仰(広義のイワクラ)
□信仰状況:神社に祭祀されている
□岩石の形状:巨岩単体
□備考: 周辺に巨岩群
□住所: 大阪府南河内郡河南町平石
□緯度経度:34°29'57.39"N 135°39'38.13"E
(googleに入力すれば場所が表示されます)
葛城山系の北側を横断する平石峠の西側に、磐船大神社が鎮座しています。
『河内名所図会』の岩船明神の絵には、岩船、山田井、福石、浪石などが記載されており、神社の看板には船形に見える石が48個あると書いてあります。神社の西側には水が湧いている「山田井」があり、この上にある岩石が「磐船」です。板垣に囲まれており、磐座として扱われているようです。神社の東側にも石垣に囲まれた岩石があり、木によって割られています。本殿の北の斜面には、今にも滑り落ちそうな平たい船形の岩石があります。また、この裏山には数多くの岩石が露出しています。特に、本殿から80メートルの距離には巨大な立石があり、磐座祭祀の中心であったかもしれません。
磐船大神社の御祭神は、天照国照彦天火明櫛玉饒速日尊です。また、『先代旧事本紀』に記載されている「天祖天璽瑞寶十種を以て饒速日尊に授けたまふ。則ち此の尊天神の御祖の詔を禀て天磐船に乗て、天降りまして河内國の河上哮峯に坐す。則ち遷て大倭國鳥見白庭山に坐す、天降之儀は、天神紀に明なリ。所謂天磐船に乗て大虚空を翔行して是郷を睨て天降たまひて、「虚空見日本國」と謂は是なる歟。」の天磐船がたどり着いた場所とされています。
しかし、磐船大神社が鎮座する河内国石川郡は、蘇我氏の支配地域であり、物部氏の遠祖神である饒速日命を御祭神とする神社が存在するのは違和感があります。やはり、饒速日命が天降った磐船は、【Introduction of Iwakura 65】で紹介した交野の磐船神社でしょう。
磐船大神社の場所には哮ヶ峰や神下山との名所が付いてはいますが、これは船形をした岩石に饒速日命の伝承を符合させた可能性が高いと思います。
一方、この磐船大神社の隣の高貴寺の元は、底筒男命が降臨した神下山香花寺で、役行者が開山したと伝わっています。空海が訪れたときに、高貴徳王菩薩が現れたために高貴寺と改名しました。江戸時代には、慈雲が葛城雲伝神道を創唱して樛宮(とがのみや)と命名しましたが、明治時代の神仏分離によって、磐船大神社と高貴寺に分離されました。
したがって、磐船大神社と高貴寺を含んだこの地域一体が古代の祭祀場であったと考えられます。祭祀の詳細が不明ですので岩石信仰に分類しました。
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