【Introduction of Iwakura 120】
□分類:自然岩石(非イワクラ)
□信仰状況:信仰の形跡なし
□岩石の形状:岩単体
□備考:
□兵庫県神戸市東灘区渦森台
□緯度経度:34°44'29.92"N 135°14'43.07"E
(googleに入力すれば場所が表示されます)
1931年(昭和6年)頃に20回にわたって六甲山を調査した神道家の荒深道斉は、1928年から純正神道研究会を組織し、神霊科学の研究を行い巨石文化の遺跡を探索しました。1949年に79歳で亡くなりましたが、荒深道斉の思想は、現在も「道ひらき会」に受け継がれています。
荒深道斉は鴨子ケ原の北に天文石と呼ばれる岩を発見して以下のように述べています。「その山の北麓の谷間に横はって居る巨石で、これにも精巧なる天文図が刻されて、琴座が北極にあり、その向って左に龍座の頭を右に白鳥座を現し、右下中央に近き所の天頂に左に北斗星(小熊座)右にカシオペア座、その下に馭者座及び牡牛座を刻し、最下方にオリオン座を示して居る。その他の一等星二等星は殆んど画いて居る。この石も一万三千年前乃至四万年前の天文図である。・・・『擧げて磨け八咫鏡』荒深道斉(1932)より」
10年前に、荒深が画いた天文石のスケッチは確認できるのですが場所がわからずに困っていたところ、「道ひらき会」の信者の方に場所を教えていただきました。
天文石は、縦4メートル、横3メートルほどの平たい岩で表面に数多くの穴が空いています。この穴を人工的に造られたものと判断して理論を展開した荒深ですが、三国岩【Introduction of Iwakura 118】と同じように人工的な盃状穴とは思えません。しかし、荒深はこの理論展開の中で、「今の北極星は北斗七星のアルファ星だが1万3千年前は琴座のベガであった。この天文石にその時の星座が刻まれているので、天文石に星を刻んだのは1万3千年前である。」と結論付けています。この時代に地球の歳差運動の知識を持ち、それを岩石遺構の研究に利用しているのは驚愕です。岩石上の穴を人工物と誤認したのは残念ですが、岩石に人の手が加わっている証拠の一つとして、岩石表面の窪みが星の配列に一致することを挙げて、その年代特定に歳差運動を利用するという見方と可能性を提示したことは荒深の功績として評価できます。
現在ではこの手法は実際に使用されています。例えば、岐阜県の金山巨石群に対して、ドイツ人考古学者のDr.Stefan Maeder氏は、盃状穴が形成する北斗七星の形から北極星はりゅう座のトゥバーンを指標にしており、この岩石遺構が造られた年代は紀元前2800年頃と推測しています。
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