【Introduction of Iwakura 131】
□分類:岩石信仰(広義のイワクラ)
□信仰状況:祭祀されていないが過去に信仰の形跡あり
□岩石の形状:石単体
□備考:人工物、盃状穴あり
□住所:三重県伊勢市豊川町
□緯度経度:34°29'10.111"N 136°42'13.895"E
(googleに入力すれば場所が表示されます)
伊勢の外宮の御正宮から別宮へ向っていると、小さな溝に渡された石の橋があります。これが亀石と呼ばれている岩石です。頭のような部分があり、形状は亀を表しています。一説には、高倉山の古墳に使われていた岩石だといわれています。
この場所から北西600mの位置にある高倉山古墳は、6世紀後半に造られた円墳です。両袖式横穴式石室の長さは18.5メートルもあり、日本全体でトップクラスの大きさの石室です。外宮を奉斎している度会氏の首長を埋葬した古墳との説があり、渡会氏の聖地であった高倉山の麓に外宮を建設したのではないかと考えられます。
さて、その亀石には、数多くの盃状穴が彫られています。盃状穴は、石を少しずつ削って窪みを造ったもので、再生や不滅の信仰として世界中で見られます。日本では縄文時代から磐座に彫られていたものが、古墳時代に棺に彫られるようになり、昭和初期まで神社の手水石や灯篭等に彫る事が続いていました。子孫繁栄や死者蘇生を願ったものと考えられていますが理由は明確ではありません。注意しなければならないのは、この盃状穴があったからといって古い時代のものとは限らないことです。
一方、亀石に盃状穴があるということは、この亀石に対する信仰があったことになります。ただし、外宮の境内で盃状穴を彫るということはできませんので、やはり高倉山古墳の石室の前で、石室に使用された亀石に対する信仰が発生して盃状穴が彫られていた。その後、この岩石が外宮まで運ばれたと考えるのが自然だと思います。
そして、現在の外宮では、なぜか信仰されていた岩石である亀石を人が踏む場所に用いています。
神宮では、瀧祭神や四至などのように岩石を矮小化したり、内宮の磐座のように祭祀を途絶えさせたりしています。この亀石の取り扱いも、岩石信仰を隠すためかもしれません。
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